« 代表アルゼンチン戦 | トップページ | 赤霧島 »

2010年10月 9日 (土)

柏木考

勝ち続けることと、選手を育てることの狭間で苦しんでいた浦和が、ジワジワと調子を上げてきた。25節のさいたまダービーを制し、これで7試合連続負けなしの2連勝。順位こそ、いまだ8位だが、AFCチャンピオンズリーグ出場圏内の3位との勝ち点差は6にまで迫った。浦和を「常勝を義務づけられたクラブ」と見る向きには、8位という順位にとても満足はできないだろうが、最悪の状態からは脱したようだ。
 浦和の上昇傾向を象徴するのが、今年移籍加入した柏木陽介の適応だろう。広島時代は、のびのびとピッチ上を走りまわっていた印象のある柏木が、浦和への移籍後は、どこか窮屈そうにプレイしているのが気になった。長い距離を走ってスペースへ飛び出して行く思い切りの良さは失われ、足元でボールを受けても、ゴールに直結するようなパスは出せない。「こんなに何もできんかった試合は初めて」と口にする試合さえあった。
 そんな柏木がようやく本領を発揮し始めたのが、20節の湘南戦だった。試合後、柏木が「だいぶ良くなったやろ」と笑顔で話したこの試合は、前半こそ守りを固める湘南に苦しんだが、後半はうまくスペースに顔を出してボールを受けると、決定的なスルーパスを何本も通した。
 そして、25節の大宮戦。2試合連続ゴールに加え、先制点のアシストも決め、この試合の全得点に絡んだ柏木は、ようやくここまで来られた、とでも言うように、こんなことを言っていた。
「自分のやりたいことがやれるようになってきた。自分らしいプレイができてる」
 2試合連続ゴールについても、利き足とは逆の右足でのシュートだったが、「まったく迷いはなかった」と柏木は言う。「(エジミウソンからの)パスが浮いていた分、打ちやすかった。浮いてなかったら、迷ったかもしれないけど」
 とはいえ、2点を奪った試合序盤こそ、浦和はいいリズムでパスをつなぐことができたが、次第に攻め手を失っていった。これは23節の清水戦でも見られた現象である。先制しながら追加点が取れず、1対1で引き分けた清水戦と比べ、「2点目を取れたのが大きかった」と柏木。だが、追加点を奪ってからの試合運びには、当然課題を感じている。「浦和の選手は技術があるから、自信を持ってつなげば、(苦しくなった時間帯も)もっといい攻撃ができるはず」
 今はまだ、パスの“出し手”としての柏木のほうが目立っているが、柏木にパスを出した選手が動いて、もう一度パスを受けてやれば、今度は“受け手”としての柏木の良さをもっと引き出せるはずである。柏木自身も、最近はボランチでの出場が続き、やや後ろの位置から攻撃に絡んでいくことが多くなった。これが窮屈感を拭い去る一因となった一方で、攻撃に関わる回数が少ないという実感もある。「もっとボールに触れるはず」と、まだまだ不満顔だ。
 チームと自身の上昇傾向に合わせて、周囲ではザッケローニ新監督が就任した日本代表入りへの期待も高まっている。しかし、そんな声も、今は調子が上がってきているからこそ、落ち着いて聞き流せる。「もちろん、選ばれたいという気持はある。でも、まずはチームのためにプレイすること。そこでいいプレイをして、結果として選ばれたらうれしい」
 今年のJ1も残り10試合を切った。柏木は残された時間で、どこまで浦和にフィットするのだろうか。それは浦和というチームの調子を測るバロメーターにもなりそうだ

|

« 代表アルゼンチン戦 | トップページ | 赤霧島 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 柏木考:

« 代表アルゼンチン戦 | トップページ | 赤霧島 »